微炭酸のしょう油

やわらかいところ、刺してもいいですか?

平安時代のHIPHOP

録画していた「フリースタイル日本統一」を最後まで観た。ラップおもしれえ。最後がFORK対呂布カルマになるのがアツすぎた。ラップバトルの真髄を観た気がした。

ラップバトルがそもそも不良の文化から生まれたのは分かるのだけれども、やってることはバリバリ文学だと思ってる。韻をベースに瞬時に文章を作る。ラップのシーンにそろそろ文学の畑の人が出てきたらめっちゃ面白いやんとか思ってる。

ぼくが百人一首で一番好きな歌は「大江山いく野の道の遠ければ まだふみも見ず天の橋立」という歌だが、これは歌の意味よりもこれが詠まれた背景がめっちゃ好き。この作者の小式部内侍は子どもながらにして歌人でもあるスーパー小学生みたいな人で、お母さんがこれもまた有名歌人和泉式部っていう人だったんだけど、ある日歌会に小式部内侍が1人で参加しようとしていると、すれちがった男から、「今日は1人で大丈夫ですか?もうお母さんから手紙は届いたの?」と言われたそう。つまり母のゴーストライターを疑われ、その手紙が届いたかと冷やかされたのである。そこで瞬時に返して詠んだのが「大江山」の歌だと言う。これは「いく野」の部分が「生野」という地名と「野を行く」がかかっており、さらに「ふみもみず」が「踏んだことがない」と「文(手紙)がない」がかかっている。そしてアンサーとして「(母のいる)天橋立には遠くて行ったこともないし、手紙も来てませんわよ」という意味も通っており、スーパーダブルミーニングラクル一首であり、これを瞬時に詠んだことで男は黙ってしまったという。これぞまさにHIPHOPであり、即興で生み出すトップオブザヘッド。素晴らしき平安のQ&A。スリルとスキルが詰まった瞬間の芸なのである。