微炭酸のしょう油

やわらかいところ、刺してもいいですか?

ガーデンズハイ

明日からゴールデンウィークだ。友だちとBBQしたり飲み会したり、親戚と集まったりの予定が入っているが、ぼくがそこそこ楽しみにしているのは奥さんと庭仕事することだったりする。今回は庭に敷いてある防草シートを張り替えようかと考えている。まずは今ある防草シートの上に乗っている砂利をどかすところからだ。そして下に生えた雑草を駆除し、平らに慣らして新しい防草シートを張る。うまくできるだろうか。そう、うまくできるか分からないから庭仕事は楽しい。庭がどう変わるかを楽しみたい。言わばガーデンズハイだ。草花が光合成をするように、その循環の一部に組み込まれるがごとく人間が自然の一部に回帰する。庭が人間に染み込み、人間が庭に染み込んでいく。そしてぼくは地球の一部となる。大いなる意思のもとに。遠い過去の記憶が人間がかつては小さな微生物だった頃を呼び覚ます。小さな一個が群れをなして編み出す全体としてのEARTH。そう、全体は集合なのである。葉緑素が生み出す力は生命の源となり、緑の血を循環させる。そして少しずつ、地は緑に染まる。

やっべー。後半ガーデンズハイになりすぎたー。とにかくゴールデンウィーク楽しみー。

サッカーで泣いた日

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横浜F・マリノスの試合を観に行った。この試合は通常のJリーグの試合と異なり、アジアチャンピオンズリーグというアジアの大会で、対戦相手は蔚山現代という韓国のチーム。大会の準決勝の試合で、勝てばアジアの王者に王手がかかる。

この大会では条件が同じになるようにホームとアウェイを1試合ずつ行い、その合計スコアで勝負を決める。マリノスはアウェイで0-1と負けてしまったため、この日は2点差以上で勝利すれば逆転することができる。

試合はマリノスが前半から押せ押せムードだった。前半の早い時間帯に1点を取ると、すぐさま2点、3点とゴールをゲット。前半30分でトータルスコアを3-1にして、漂う楽勝ムード。「これは良い試合を観に来たぜ」と心のなかで小躍りする。しかしこの後に待っていたのは地獄の展開だった。

まずはその後にコーナーキックから失点。セットプレーというものは試合の流れと関係なくスコアを動かす力がある。がしかし、まだトータルスコアでは勝っているし、今日は前線のブラジル人トリオが絶好調だ。「どうせまた取り返せるさ」、そんなことを思いながら見守っていた。そんな中で迎える前半42分。相手の激しいプレスにボールを奪われると鋭いカウンター攻撃がマリノスのゴールに襲いかかった。抜け出す相手選手に対し、マリノスはDFの上島選手しか反応できていない。「頼む、上島!」と心で叫ぶと同時に、上島がスライディングをして相手選手に襲いかかると、相手のドリブルしたボールが無情にも上島の手に当ってしまう。審判の笛がピッチに鳴り響く。意味するのは相手のPKだ。「追いつかれた」。そう思うと同時に僕らマリノスサポーターの心を打ち砕いたのは審判が掲げた1枚のカードだった。レッドカード。上島選手に提示されたのは一発退場の判定。PKという最大のピンチもさることながら、前半のうちに1人選手を失うことになってしまった。まさに天国から地獄。相手はPKをきっちり成功させてトータルスコアが同点となった。しかしそれ以上にここから先に11人対10人になってしまったことがとてつもなく痛い。1人少ない中で点を取るのは限りなく難しい。であればここからはとにかく守りながら少ないチャンスに賭けるしかない。そんな展開が目に見えていた。

相手の蔚山現代は冷静だった。1人多い蔚山は後ろでボールを回しながら右に左にボールを散らす。マリノスの選手はそれになんとかついていく。しかしやはり1人少ないのが厳しい。簡単にボールを前に運ばれ、サイドから再三チャンスを作られた。マリノスはとにかく耐えに耐えた。前からボールを奪いに行くことはせず、とにかくゴール前を固めて相手のシュートミスを誘う。1人少ないことで1人1人の運動量は多くなってしまうが、選手たちはそれでもなんとかしぶとく守り続けてくれた。

こんな異様な試合は初めてだった。本来サッカーの試合を観に行くと、シュートチャンスや華麗な攻撃シーンに観客席が湧くものである。しかしこの日のサポーターは違った。とにかくゴールを守る使命のもと泥臭く身体をぶるける守備のプレーに、相手のパスミスを誘うようなプレスの頑張りに、ぼくの周りで試合を見つめるサポーターは拍手を贈り、歓声を届け続けた。

PKで退場になってから、前半の残り時間の10分、そして後半の45分、加えて延長戦の30分。その時間、マリノスの選手は耐えに耐えた。ゴールポストに当たったシュートも何本かあったし、それこそゴールの中にボールが入ったがその後に相手のファールが認められてゴールが取り消しになったこともあった。まさに奇跡の中で、その奇跡を手繰り寄せるかのような選手の頑張りがスコアボードを守り続けた。

そしてついに試合終了の笛が鳴る。なんとかここまでたどり着いた。迎えるのはPK戦での決着である。本当に選手たちはよく戦ってくれた。そしてPK戦なら1人少ないことも関係ない。勝てる、勝てるぞ。

PK戦が始まると、横浜の地、ホームスタジアムのアドバンテージが最大限に活きた。キックとキックの間にはGKポームウィリアムへの大歓声、味方のキック時には集中を切らさないように静寂を作り、逆に相手のキック時には精一杯のブーイングで邪魔をした。試合後監督のキューウェルがこうコメントしている。「退場で1人少ない中、サポーターが11人目の選手として頑張ってくれた」。そして相手5人目のキックをポープが値千金のセーブ。続くマリノスエドゥアルドがしっかりとゴールを決め、マリノスはこの死闘を勝利で終えることができた。ぼくは流れる涙を抑えることができなかった。

地方在住のぼくはマリノスの試合を年間で1試合ほどしか観戦できない。しかし長いマリノスの歴史の中でも5本の指に入るような歴史的な試合を観戦できたことを誇りに感じる。とんでもない試合だった。まさに天国から地獄、からの天国。何か一つが違っていたらたどり着けなかった細くて脆い微かな光を、泥臭さと根性と誇りで手繰り寄せた勝利。こんな試合観たことがない。なんとか仕事を休んで横浜まで行って良かった。これだからサポーターはやめられない。やめることはできない。

百獣

小さな軽自動車の中は沈黙が流れていた。運転手の彼と助手席に座っている僕。どちらも言葉を発さない。僕にしてみれば何か会話をしてみてもよいのだけれど、なんとなく会話が続かなそうな予感がして、それならばと沈黙を続けている。運転手の彼は何を思っているだろうか。気まずさを感じているだろうか。まあよい。僕は頭の中でRIP SLYMEの楽園ベイベーを口ずさんだ。常夏の楽園ベイベー、ココナッツとシャンシャインクレイゼー。

「あのー」

運転手の彼はその小さな声で僕に話しかけてきた。なんだ、こいつも気まずさを感じていたのか。僕は少しばかりの期待をしてその次の言葉を待った。

「ライオンって百獣の王じゃないですか。じゃあシマウマって百獣の何ですかね」

「百獣ってぜんぶに役職あんの?」

「ないんですか?」

「あんですか」

 

あんですかあ?

文芸誌作りたい

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本屋に文芸誌が売っていたので買ってみた。上質な紙となかなかのボリューム。これで300円なのだから凄い。中身はエッセイや小説など。気軽に読めるので楽しい。こんな文芸誌を作ってみたい。エッセイだったらなんとかなる気がする。誰か作ろうよ。