微炭酸のしょう油

やわらかいところ、刺してもいいですか?

命を失うかもしれなかった話

家に帰ると机の上に1つの小包が置いてあった。聞くと奥さんが職場でもらってきた日本茶とのことだった。奥さんが「ちょうどいいから開けてみて」と言うので、ぼくはその包みを丁寧に開けた。中にはしっかりとした箱に梱包された缶が入っていた。同封された紙を読むと、そこには徳川家康の言葉が刻まれている。こんな日本茶見たことない。缶の中には銀色の袋に包まれたお茶っ葉が入っていた。ぼくは「これ缶に移しとくよー」と言って銀色の包みの上の方をハサミで切った。それが間違いだったのかもしれない。ぼくのような人間が、こんな立派なお茶に触れてはいけなかったのかもしれない。銀色の袋を傾けてお茶っ葉を缶に流し込む。すべてを流し込んだ後に缶の蓋を閉めようとした瞬間、悲劇が起こった。缶の蓋の中には、プラスチックのタッパーの蓋みたいなものが入っていた。それを忘れて缶の蓋を持ち上げたとき、そのタッパーの蓋がするするとすべった。そしてそれはお茶っ葉が入った缶を倒していった。ぶちまけられる茶葉。最悪。ぼくがキッチンの脇の細い縁のところで作業していたのも悪かった。茶葉の半分ほどがキッチンのシンクに落ちてしまった。ぼくは謝った。それは正面から謝った。全てがぼくの責任である。この場合に、ぼく以外に悪い人間はいない。心底落ち込みながらシンクに落ちた茶葉を片付けた。幸運にも半分ほどの茶葉は無事だった。良かった。「まだ半分ある」か「もう半分しかない」か、どう考えるかだ。まだ半分あると考えよう。そう思っていたときにふと思った。これいくらだったんだろう。ぼくはそのお茶に書かれた文字をGoogleで検索した。そのメーカーのオンラインショップが出てきた。おお、なかなか良さそうなメーカーだ。サイトもしっかりしている。そこに載っているお茶の値段を見て驚いた。1箱16800円。おいおいおいおいおいおいおい。まじかよやめてくれ。ぼくがさっき一瞬で無に帰した茶葉は8400円だったってことか。そんなばかな。ぼくはサイトをよく確認した。それは一番高いお茶の値段だった。よく見る。するとうちにあるやつは別のやつだった。2000円だった。あぶねー。命を失うかもしれなかった話。

 

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