微炭酸のしょう油

やわらかいところ、刺してもいいですか?

衣類片寄りってなんだ

イライラが止まらない。

ロマンチックなら良かったのに。あいにく止まらないのはイライラである。
今日のこと。嫁が朝から出かけるというので、洗濯を頼まれた。「とりあえず第一弾は回しておいたから、終わったら中身を干して、布団カバーを洗濯しといて」とのこと。あまり洗濯機の経験はなかったけど、とりあえず洗剤入れてスイッチ入れればいいんだろ、と思っていた。

少しするとピー、ピー、ピーという音が鳴った。第一弾が終わったのだ。第一弾は洋服だったので、ハンガーにひとつひとつかけていく。無音が寂しかったので、iPhoneSEKAI NO OWARIをかけながら洗濯物を干した。

全ての洋服をかけ終わったので、次は布団カバーだ。指定された2つの布団カバーを洗濯機に入れて、スイッチを入れる。ボールドを入れるのも忘れない。そしてしばらく待っていた。するとピピピピピピ! という音が聞こえた。先ほどの第一弾の終わりを告げる電子音とは明らかに異なる音。急いで洗濯機に駆けつけると、「衣類片寄り」というところが点滅していた。「なんじゃこりゃ」と思ったが、ひとまず衣類が片寄っていることだけはかろうじて分かったので中身を少しほぐしてフタを閉めた。するとウィーンという音とともにまた洗濯機が回り始めた。

良かった、もしかしたら洗濯機の才能があるかもしれないと思い、少し休んでいたらまたもやピピピピピピ!という音。まさかと思って洗濯機に駆け寄るとまたもや「衣類片寄り」の文字。ぬぬぬ、と思ったが先ほどの手順でまた中身をほぐしてフタを閉める。また洗濯機は回り始めた。しかし少し嫌な予感がした。というのも中身を開けたときはすでに水は脱水されているようだったのに、フタを閉めた後はまた水が放水されている音がする。つまりは先ほどの続きからの再開ではなく、また水を入れて洗うところから再開なのか? まるでダンジョンの出口付近で全滅したときに、セーブしていなかったためにダンジョンの入り口からやり直したときの感情だ。

嫌な予感は当たった。またピピピピピピ!という音が鳴ったのだ。つまりさっきのボスを倒したのはセーブされていなかったのだ。またボスとのエンカウントだ(ボス戦は凝った登場アニメーションがあったりするから、それもイライラする原因のひとつだったなー)。ぼくはこのままだと永遠にこの作業から離れられず死んでしまい、その後強い現世への恨みから妖怪「衣類片寄りほぐし」としてたびたびアパートに現れることになりかねないと思い、異なるアプローチを試みた。それが「電源を切る」→「脱水のみを行う」だった。やはり洗濯機の才能があるのだろうか。この方法を思いついたとき、コペルニクス的転回とはこのことかと思った。コペルニクス的転回がなんのことかよくわかってないけど。

そしてぼくは一度電源を切り、その後脱水のみのボタンを押した。よし、これでやっと永遠のループから抜け出せる。そう思ってしばらく経った後にまたもやピピピピピピ!という音。洗濯機を見るとまたもや「衣類片寄り」の文字。もうぼくが鈴木みのるだったらゴッチ式パイルドライバーをこの洗濯機にぶっ放してたところだが、そうもいかない。とりあえずさっきのほぐしだけじゃダメだと思い、もう一度だけ電源を切って脱水だけをしてみた。

結果的にこれが良かったみたいで、ついにその作業は正常終了を迎えたのだが、その作業時間たるや3時間半。もう日も傾きかけていたので、布団カバーは浴室乾燥機を使って乾かすことにした。

ぼくをここまで苦しめた「衣類片寄り」とはいったいなんなのか、そしてそれを攻略する手段は何があるのか。家事とはまだまだ深く長い道のようだ。


 

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