たまにお酒なんぞを飲んで帰ると、しばしばリビングで寝てしまう。
その度に嫁に言われる。
「お願いだからそこで寝るのだけはやめて!」
僕としては眠くなって寝てしまうのだからしょうがないじゃないかという気持ち。
人の欲求の中で一番強いのは睡眠欲だと聞いたこともあるし、
人間が受ける拷問で一番辛いのは眠らせない拷問だとも聞いたこともある。
しかし、思い知った。
それらは寝る側の論理なのだ。
今日、リビングでゲームをしていたら、いつのまにか嫁がソファで寝ていた。
最近出したタオルケットにくるまって、グースカピーと寝ていた。
はじめは「こいつ寝てやがる」と軽い気持ちで眺めていたのだが、
しかしそれは寝る時間になって思い知った。
「おーい、寝るぞー」
「うん・・・」
「ここで寝てたら風邪ひくぞー」
「うん・・・」
「お風呂入っちゃいなー」
「うん・・・」
「寝ちゃうよー」
「うん・・・」
起きねえ。
何を言っても「うん・・・」で受け流される。
それ、まるで合気道の達人。
無敵の「うん・・・」。
とにかくこのまま寝るわけにもいかないので、腕を揺らして起こすが、
「うん・・・」
体を揺らして起こすが、
「うん・・・」
顔を揺らして起こすが、
「うん・・・」
助けてくれ。
もうしょうがないので、むりやり腕を引っ張って立ち上がらせた。
ほぼ寝たままだったが、なんとか立ち上がってくれた。
僕は思った。
これは罪だ。
リビングで寝るのは、紛れも無い罪なのだと。
そして罰だ。
普段リビングで寝る側への、他でもない罰なのだと。
僕は誓った。
もう二度とリビングで寝ることはしないと。
ドストエフスキーに誓った。