職場の帰り道、霧雨が降る中で、なかなか変わらない信号を待っている職場の女性に会った。「お疲れ様です」とは挨拶はするが、それ以上の会話はかわなさいくらいの関係性の同僚だ。
少しだけ強くなった雨。私は右手に傘を持っていたが、それを差すことはしなかった。理由はひとつだった。同僚の女性が傘をもっていなかったからだ。
なんとなしに目線を外して立っていると、同僚の女性が私に聞いた。
「傘、差さないんですか?」
私は答えた。
「だって、差しづらいじゃないですか」
一人で傘を差してしまうと、「なんであの人、女の子が濡れてるのに自分だけ傘差してるの?」と思われるし、かといって「これ使ってください」と自分の傘を差し出すほど、私は純粋な優しさを持ち合わせていない。
ならば共に濡れる道を選ぼう。それが私の優しさだ。
1には満たない、0.5の優しさなのだ。