微炭酸のしょう油

やわらかいところ、刺してもいいですか?

エメラルドオオカマキリ

エメラルドオオカマキリというカマキリがいる。エメラルドオオカマキリのオスは夕方になると北北西に向かってカマを大きくかざすのだった。
一説によると、地球の自転を感知しているのだとか、磁場の影響だとか言われているのだが、真相は定かではない。しかしながらその方角の正しさはそこらのコンパスなんかよりよっぽど正確だから、現地の住民は森に入るときにエメラルドオオカマキリを忍ばせていくとも言われている。
ある探検家が遭難したときに、ふと目線の端にエメラルドオオカマキリを見つけた。これでやっと帰れる。夕方になりこのカマをかざしたら、そこから西の川の方向へと進めばいい。安心しきった探検家だったのだが、夕方になってもカマキリはびくともしない。死んだのか? はたまた夕方には早すぎる時間なのか? そんなことを考えていると、探検家はあることに気付いた。これはモスグリーンコカマキリだ。通りでなにも反応しないわけだ。
ガッカリした探検家は、ポケットからスマートフォンを取り出すと、実家に連絡を入れた。しばらくすると探検家の親が迎えに来てくれた。探検家は今、平和に暮らしている。